府省庁の動き

防衛力整備計画事業費43.5兆円のうち25年度までに62%措置、自衛官処遇改善などを重視した2025年度防衛省予算案

ポイント
・総額8兆4,748億円(前年度比9.7%増)
・防衛力整備計画事業費43.5兆円のうち25年度までに62%措置
・スタンド・オフ・ミサイル関連に9,390億円
・領域横断作戦能力の一環として宇宙領域での能力強化に5,403億円
・自衛官の処遇改善で過去に例のない30の手当新設・金額引き上げ
・サイバー、無人アセット、防衛生産基盤強化も重視

日本は戦後で最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しているというのが基本認識だ。国家防衛戦略、防衛力整備計画に基づき、整備計画期間内の防衛力抜本的強化実現に向けての3年目となる2025年度においても、引き続き必要かつ十分な予算を確保することとした。予算総額8兆4,748億円。24年度までと合わせ、整備計画の実施に必要な契約額43.5兆円のうち既計上分は62%となる。

射程や速度、飛翔の態様、対処目標、発射プラットフォームといった点で特徴が異なるさまざまなスタンド・オフ・ミサイルの研究開発や量産、調達を進める。これは、契約ベースで9,390億円を計上した。国産スタンド・オフ・ミサイル関連では、12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)の地上装置などの取得、12式地対艦誘導弾能力向上型(艦発型)の取得、極超音速誘導弾の製造態勢の拡充などだ。外国製関連では、Joint Strike Missile(F-35Aに搭載)、Joint Air-to-Surface Stand-Off Missile(F-15能力向上機に搭載)、トマホーク発射機能の艦艇への付加などがある。

スタンド・オフ防衛能力に必要な目標の探知・追尾能力の獲得のため、25年度末から衛星コンステレーションの構築を開始する。衛星コンステレーションとは、一定の軌道上に多数の小型人工衛星を連携させて一体的に運用するシステムのことだ。

領域横断の作戦能力を重視し、とりわけ宇宙領域における能力強化に5,403億円(他分野を除くと2,119億円)を盛り込んだ。宇宙領域は今や国民生活や安全保障の基盤であり、宇宙利用の優位を確保することは極めて重要と位置付けている。 多国間の衛星通信帯域共有枠組み(PATS)対応器材などの整備のほか、通信能力などを向上させた次期防衛通信衛星を整備するため1,238億円を盛り込んだ。航空宇宙自衛隊への改称も見据え、宇宙空間の監視や対処任務を目的とする宇宙作戦団(仮称)を新編。衛星コンステレーションも宇宙領域に含まれる。

島しょ部等へ必要な部隊等を確実に輸送するために、民間船舶4隻(2隻から6隻体制へ)を確保。島しょ部への海上輸送能力強化のため、中型級船舶・小型級船舶・機動舟艇を1隻ずつ取得し、共同の部隊として新編される自衛隊海上輸送群(仮称)にて運用する。

次期戦闘機の開発に1,087億円を計上した。日英伊3か国共同で設立したGIGO(GCAP International Government Organization)を通じた開発に移行する計画となっている。25年度より、日英伊がそれぞれで実施していた機体及びエンジンの設計などの作業をGIGOの下に一元化し、3国で緊密に連携して実施する。次期戦闘機の開発と並行して、次期戦闘機に搭載する次期中距離空対空誘導弾を日本で開発する。

自衛官の処遇改善は、石破政権として最重要課題の一つに位置付けている。24年10月に設置された「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議」において、高い頻度で活発な議論を行い、「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針」を取りまとめた。25年度予算案に関連事業に4,097億円を盛り込み「過去に例のない30を超える手当などの新設・金額の引上げなどを実施する」と強調している。

例えば、航空管制官に支給する手当、航空機整備員に支給する手当、主要な野外演習などに従事する隊員に支給する手当などを新設。航空手当、災害派遣手当などは金額を引き上げる。

統合防空ミサイル防衛能力関連は5,331億円。各種ミサイルや航空機などの多様、複雑化による脅威に適切に対処することが重要であり、探知・追尾能力の向上や、ネットワーク化による効率的対処の実現、迎撃能力の強化が必要であるためだ。具体的には、イージス・システム搭載艦の整備に伴う関連経費、実射試験を含む各種試験の準備などの経費、各種迎撃用誘導弾の整備などとなる。移動式警戒管制レーダー(TPS-102)の取得なども行う。

無人アセット防衛能力は1,110億円とした。業務の効率化だけでなく、新たに可能となる形態のオペレーションに無人アセットを活用することで、人的損耗を局限しつつ、陸上・水上・水中・空中における非対称的な優勢を確保する。滞空型UAV「MQ-9B(シーガーディアン)」、小型の艦載型UAVなどを取得する。

サイバー領域における能力強化には2,927億円。高度、巧妙化するサイバー攻撃に対し、将来にわたって適切に対処する能力を獲得し、自衛隊の任務遂行を保障できる態勢を確立する。

電磁波領域における能力強化も重視し、陸・海・空、宇宙、サイバー領域に至るまで、電磁波の活用範囲や用途が拡大し、電磁波領域は現在の戦闘様相における攻防の最前線と位置付けた。電磁波領域における優勢の確保は喫緊の課題となっている。

防衛生産基盤の強化には996億円を盛り込んだ。防衛産業は日本の防衛力そのものであり、防衛力整備の一環として維持・強化を推進。力強く持続可能な防衛産業を構築するため、抜本的な取組を実施し、防衛産業を取り巻くさまざまなリスクへの対処を強化する。同時に、防衛産業の販路の拡大などに向けた取組を推進する。

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