本音で話し合えるのはトップ同士
― トランプ大統領によるGDP比5%という防衛費増額要求について。
(浜田氏)あくまで、それは米国の希望だ。われわれにとって、できないことは、明確に意思表示する必要がある。将来はできるかもしれないが、今は答えることができないということもあるかもしれない。いずれにせよ、一国だけの考え方で、われわれが影響を受けるということは、あまり良いことではないと思う。
財源などを考えると、即答できないのは、むしろ当たり前。本音で話し合えるのは、やはりトップ同士だ。日本のトップがトランプ氏と話し、互いの腹の内を述べ合うのは、決して悪いことではない。ぜひ、やっていただきたいと思う。
切り離せない外交と防衛
― 石破茂首相は「アジア版NATO」構想を提示しており、安全保障での地域的枠組みづくりは重要だ。
(浜田氏)日本と信頼関係を構築できる国との関係は、さらに強固にしていくべきだ。その中で、若くて元気の良い国が出てきているのは事実。例えば、インドネシアをはじめとする国々との関係を、しっかり結んでいくことは不可欠であろう。「アジア安全保障会議」(シャングリラ・ダイアローグ)という会合が毎年、シンガポールで行われている。
同様に毎年、ドイツ・ミュンヘンで開催する「ミュンヘン安全保障会議」は世界で最も権威ある安全保障関係の会議の一つだ。そして、アジアにおいては、シャングリラ会合が存在感を非常に高めている。私も防衛相在任時にはシャングリラ会合に出席し、多くの国と意見交換した。
近年、2国間において、双方の外相と防衛相が一堂に会して協議する「2プラス2会合」が増えてきている。外交と防衛は切り離せないテーマとなっている証左だ。いずれにせよ、このような形態における安全保障分野での対話の積み重ねは、信頼醸成などのために非常に高い価値がある。
自衛隊独自の俸給制度
― 石破内閣は自衛官の処遇改善について、閣僚による枠組みを設けて取り組んでいる。
(浜田氏)施設の強靱化として、老朽化した自衛官の隊舎を、今の時代のニーズに合うように更新する事業を行っている。自衛官の俸給体制は、現行は一般の公務員に準ずるものとなっている。しかし、本当にそれでいいのだろうか。なかなか難しい点はあると思うが、自衛隊独自の俸給制度が必要ではないか。
今回の自衛官の処遇改善の一環としての制度改正で、新たに入隊する人たちは、給与の手取りがそれなりに増えることとなった。しかし、今いる人たちの給与はなかなか変わらない。これを変えるため、自衛隊独自の俸給制度の導入を目指したい。
― 独自の俸給制度が望ましい理由は。
(浜田氏)自衛隊は、いざという時には自分の命を賭して遂行すべき任務がある。差別化を図るというより、むしろ、名誉のためだ。定年は他の公務員よりも若くなっている。そういう人たちが、その瞬間、瞬間に、さまざまな判断を下しながら任務を遂行するわけだ。それに対する対価は、独自に計算した方が良い。
統合作戦司令部で一元的運用
― 自衛隊に「統合作戦司令部」が新設された。
(浜田氏)今年3月に設置した統合作戦司令部は、陸、海、空の各自衛隊を平時から有事まで一元的に指揮、運用する。これまで陸海空の各自衛隊はそれぞれの指揮系統で運用されており、事態が起こってはじめて「統合幕僚監部」が全体を調整する体制だった。しかし、これでは迅速な意思決定や即応力には限界があった。統合幕僚監部では、統合幕僚長が防衛相を補佐したり、首相官邸に行ってさまざまな情報を提供したりということも行っていた。
統合作戦司令部の創設により、有事対応の即時性、柔軟性を大幅に向上させることが可能になる。実際に部隊を動かす部門を新たにつくり上げたというのは大きな前進、変革だ。陸海空自衛隊が各自の部隊を錬成しながら、かつ、実際に動く際には一つになって対応できる体制となった。また、米軍との連携、情報交換がスムーズになる。
対等な関係
― 日米同盟の在り方について、どのように考えるか。
(浜田氏)日米は同盟国であり、重要な関係にあるのは当たり前だ。そうは言いながら、そろそろ、これを対等な関係にしていかなければならないという思いは、ずっとある。そうしたことを含めて、米国と話し合う機会なのではないかと思っている。
これは全く個人的な思いだが、やはり日本が独立国家としてやっていくためには、何かあった時は米国に支援をお願いするが、米国に何かあった時にお願いを言われた場合、今の状況では対応できない。少しは改善され、集団的自衛権の特別な形というのもできた。
しかし、完全な集団的自衛権を行使することによって、文句なしに米国を助けに行くことは、なかなか難しい。そうした状況の中、もう一度、さまざまなことを考え直した方がいいのではないかという気がしている。
首相のアナウンスメントは重要
― 石破政権の防衛政策をどのように見ているか。
(浜田氏)防衛3文書が改定された上、防衛予算については、かなりの金額を扱うようになり、執行の仕方も変わった。今はまさに過渡期だと言える。そういう意味では現段階で、石破内閣からのアナウンスメントは、あまりないのかもしれない。しかし、そうであっても、当然ことではあるが、例えは、自衛官の処遇改善は官邸が主導して取り組まれているのも事実だ。
そろそろ、国民の皆様方に対して、先ほど述べた憲法に関することをはじめとして、石破総理がさまざまなことについて、自身の考えを率直に述べられることは、大変重要なことではないかと思っている。
関連リンク
・浜田やすかず オフィシャルサイト – プロフィール、政策、活動報告など
・衆議院議員 浜田 靖一(はまだ やすかず) – 経歴、関連ニュースなど。自民党
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