インタビュー

政策インタビュー:河野太郎・元外相に聞く「実現しなければならない政策、実現したい政策」

社会保障の保険料は金融資産含め算定、年金は積み立て方式に移行
NATO拡大で安保、制限なき高校無償は改革逆行、排外でなく寛容な保守

河野太郎衆院議員(元外相、元防衛相)のように、「若手」のころから首相、自民党総裁を目指すと公言し、多くの著書を世に問い、果敢に総裁選に挑んできた政治家は少ない。大物議員のお家芸とも言える政局的な「寝技」とは一線を画し、激しい政策論争で頭角を現してきた。

このほど発足させた国会議員勉強会のテーマとした社会保障から、ポスト・トランプまで見据えた安全保障、人口減少下の教育、保守の意義―。「永田町の異端児」が彷徨する日本の針路を照らし出す。

河野太郎衆院議員

河野太郎氏の発言のポイント

・財政規律を重視し、基金見直しを含め徹底的に無駄を削る
・社会保障の保険料はマイナンバーの活用で金融資産を含め算定する
・低所得の人には給付もある「給付付き税額控除」を導入する
・公的年金制度は現行の賦課方式から積み立て方式へ改める
・公的年金の最低保障部分は税を財源とする
・医療、介護費用を抑制した地域の保険料を下げる仕組みを入れる
・北大西洋条約機構(NATO)のアジア拡大で集団安全保障体制をつくる
・憲法9条を改正し、日本は世界で「応分の負担と責任」を果たす
・所得制限なき高校無償化は教育改革に逆行し、公立校をレベルアップする
・商工農業など高校の専門科を強化し、社会人は大学入学でスキルを上げる
・極端な排外主義を是正し自民党を保守本来の寛容な国民政党にする

※聞き手:政策ニュース.jp編集部
インタビューは2025年3月27日に実施しました

財政は「崖から真っ逆さま」の危機

― 社会保障に関する国会議員の勉強会を立ち上げた。

(河野太郎氏)その前に、まずは国の財政規律を立て直すことだ。日本政府の普通国債発行残高は約1,100兆円。今後も現在のように国債を毎年30兆円も出せる状況ではない。ゼロ金利政策の転換で金利が上がり始め、国債の利払い費が今後どんどん増え、プライマリー・バランスの黒字化で足りるような時代は既に終わった。財政収支をしっかり均衡させねばならない。

日本は市場経済だと言いながら、すぐに政府が出てくる。例えば、半導体事業を行うラピダス株式会社への政府による2兆円近いとされる資金支援などだ。今の日本の財政状況では本来、できないはずだ。基金を含めて財政の無駄を徹底的に削るべきだ。麻生内閣の時に基金をつくるかどうかで大議論したが、現在は基金事業が200を超す。財政は坂道を転げるどころか、崖から真っ逆さまに転落しかねない。

― 国の歳出で社会保障費の割合は大きい。

(河野氏)日本の税、社会保障制度は「応能負担」になっていないことが問題だ。保険料は現役世代の賃金への課税と同じことで、多くの医療費を使うのは高齢者だ。そして、金融資産の3分の2は高齢者が持つ。負担できる能力のある人に、きちんと負担してもらおうとすれば、賃金課税だけでは間に合わない。「資産割り」を取り入れ、保険料は金融資産も含めて算定すべきだ。

そして、低所得者に対する給付もある「給付付き税額控除」の導入が必要だ。これは、所得が一定以下の場合には「マイナスの所得税」である「給付」を出し、所得が一定水準を超すと所得税を課税していく制度。つまり、負担できる人には負担を求め、できない人には国が対応することになる。

人口は逆ピラミッド、現行の年金「仕送り方式」は限界

― 年金制度改革は長年の持論だ。

(河野氏)公的年金制度に関しては、人口減で人口構成が逆ピラミッド型である中、現役世代から高齢者への「仕送り方式」である現行の「賦課方式」は持続できない。自分たちが将来に受給する年金を積み立てる「積み立て方式」に改めるべきだ。

厚生労働省は「積み立て方式にすると、賦課方式による高齢者への仕送り分との二重の負担になる」と主張する。今の若い人は、iDeCoやNISAで運用すれば現行の公的年金より利回りは良いと思っているが、現行制度では公的年金保険料を無理にでも支払わないとiDeCoはできない。結局、実は現役世代には既に重荷だ。積み立て方式にすると、この負担部分が可視化される。よって、被用者年金は、賦課方式から積み立て方式に変えた上で、二重負担部分は超長期の国債の発行により、一つの世代への負担集中を避け、長い時間をかけて解消するのが正しい。

基礎年金部分は保険料でなく税で賄うべきだ。保険料財源の場合、保険料を支払えないほど低所得の人は老後の基礎年金額が減らされるとなると、生活の最低保障機能を果たせていないことになる。よって最低保障部分は税財源がふさわしい。高齢者の生活保護受給と最低保障年金制度を一体化していくことが大事だ。これで老後の最低限のセーフティーネットとなる。年金制度の1階部分は最低保障年金、2階は積み立て方式の年金、3階はiDeCoなり民間の年金保険などという形の「3階建て」が適切だ。

介護、医療費抑制なら保険料下げ

― 社会保障には年金のほか公的医療保険もある。

(河野氏)公的医療保険制度も考え方は同じ。金融資産には資産割りを導入し、現役世代の保険料負担を軽減する。現在、国民健康保険料に資産割りを入れている地方自治体は全体の1~2割で、しかも金融資産ではなくすべて固定資産税が対象だ。嫌だという声は十分承知しているが、マイナンバーによる収入や資産の把握により、公正で公平に負担していただきたい。

現在、公的医療保険は健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険、後期高齢者医療制度と分かれている。今後は地域ごとに健康づくりを行い、医療費が減れば保険料も下がる仕組みが必要だ。医療保険と介護保険を連動させねばならない。

例えば、認知症発症をできるだけ抑えたり、しっかり高齢者の見守り支援をしたりして、医療や介護の支出が減れば、当然に保険料も安くする。医療、介護費の抑制で、例えば、インフルエンザ予防接種をするほうがトータルで医療費が下がるならば、インフルエンザの予防接種を無償化したほうがよいという判断を保険者がするだろう。

また、議論は割れるかもしれないが、亡くなられた方に腎臓を提供していただければ、人工透析している人に移植できる。そうすると1日おきの人工透析は不要となり、仕事をして税金を納めていただけるかもしれない。まずは、生きている人のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)にマイナスの影響をなるべく与えずに、医療費を下げる取り組みが必要だ。無駄な医療がないかどうか厳しく見ることが求められる。

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