インタビュー

政策インタビュー:河野太郎・元外相に聞く「実現しなければならない政策、実現したい政策」

日米同盟の「一本足打法」から集団安全保障へ

― 外交、安全保障については。

(河野氏)米トランプ政権を見ていると、日本の安全保障は日米同盟があるから十分だとは、とても言えない。実はオバマ大統領の時代に、中国による南シナ海の埋め立てに対し、米国は特に何もしなかった。東アジアへの関与は既に薄れつつあったわけだ。ポスト・トランプでも、例えば共和党にはバンス副大統領がおられるなど、アジアへのコミットメント回避は続くかもしれない。日米安保だけの「一本足打法」で不十分なのは明らかだ。

よって、北大西洋条約機構(NATO)のインド太平洋への拡大を考える必要がある。中国が仮想敵国になりがちな「アジア版NATO」創設ではなく、法の支配や民主主義、基本的人権といった共通の価値観を持つNATOそのものをアジアに広げてもらい、日本や韓国、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピンなどが加盟する。お互いに助け合う集団的安全保障、集団的自衛権の枠組みを確立すべきだ。北朝鮮の兵士がロシア側についてウクライナであれだけ戦い、中国も裏でロシアを支えていると言われる。ヨーロッパとアジアが一体化しているのは明らかだ。

今や自国だけで防衛できる国はない。憲法9条を改正し、共通の価値観を守るためにも、日本は「応分の負担と責任を果たす」と堂々と言える国でなければならない。だからこそ、東アジア危機が起きた時に域外から支援してもらえる。ウクライナ危機にも、本当なら日本はもっと踏み込んで対応できればよかった。

18、22歳のスキルでは一生働き続けられない

― 人口減少下での国内的課題はきりがない。

(河野氏)東京一極集中の打破は重要だ。大学進学などで、若者が18歳で一斉に東京に来る構図は続いている。大学や専門学校などの高等教育機関を東京から地方に移し、進学時に若者が東京や近畿圏、名古屋、福岡などに集まる現状を変えねばならない。

日本は子どもの数が激減しているのに大学を増やした。これは明らかな間違いであり、きちんと大学を淘汰した上で、工業や商業、農業といった専門分野の高校教育にもっと注力する必要がある。高卒でも大卒と遜色ない、あるいは大卒以上の収入を得られるスキルを獲得できるようにする。人手不足なのは現場であり、現場で働く人の給料を上げるための教育改革は必須だ。

公立の小中高は、お金がかからない。公立校のレベルアップへの資源投入は不可欠だ。それをせず、私立高校を含めた所得制限のない無償化を行った。これは公立高校を潰す、あるべき教育改革への逆行だ。また、社会人になっても大学に戻りやすくしなければならない。技術は日進月歩だ。18歳や22歳で得たスキルで一生働けるわけではない。高卒後にすぐ大学に行くのが当たり前という社会を変える必要がある。

排外主義でなく「ど真ん中」の国民政党

― 自民党に必要な改革とは。

(河野氏)今までの自民党は、役所が出してきた紙をホチキスで止めて「公約」としていたようなところがあった。自民党は何をする政党なのかをもっと明確にし、世の中とコミュニケーションを取らねばならない。

また、自民党が掲げてきた「保守」とは、本来は寛容な考え方のはずだったが、一部の極端な排外主義者のような人が保守を名乗っている状況がある。一部の偏った考えは保守ではない。これを是正し、世の中の真ん中に「どん」と座ることができる国民政党としての自民党をつくるのが大事だ。

関連リンク

河野太郎公式サイト – プロフィール、主な実績、主張や政策、ブログなど
衆議院議員 河野 太郎(こうの たろう) – 経歴、関連ニュースなど。自民党

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