大統領令で行われた関税率変更
― 米国による今回の関税率変更の手続きをどう見るか。
(高市氏)日本国憲法は第84条で租税法律主義を定めている。よって、関税も国会で成立させた「関税定率法」、「関税暫定措置法」によって定められている。他国との協定などで税率を変えるときも、国際協定は国会の承認が必要となる。緊急関税制度については閣議決定事項である政令だが、何を閣議決定事項にできるかということは法律に根拠を持っている。また、閣議決定する場合は、政府がきちんと各党に根回しを行うので、いずれも国会が関与する形となる。
米国でも基本的には議会が関与する仕組みになっているにもかかわらず、今回の措置は「国際緊急経済権限法」を根拠とする大統領令で行われた。私が理解している限りでは、同法は本来、イランや北朝鮮などに対応するものだ。それに米国はこれまで大統領令だけで、世界中に向けて関税率を変更してきたわけではなかったと思う。
過度な財源論避け「食べ物に困らない」生活を
― 経済対策として与野党問わず消費税減税の主張がある。
(高市氏)今年2月の食料の消費者物価指数は前年同月比でプラス7.6だった。そうすると、この大変な物価高に対応するため、消費税の軽減税率の8%分だけを時限的にゼロにして、標準税率の10%分はそのまま据え置くという対策は効果があると考える。政府は「物価上昇を超える賃上げの実現」を言っているが、退職されたり、病気で入院されたりしている方、障害をお持ちの方、そのほかにも何らかの理由で働けない方などがおられる。こうした、賃上げに直接関係ない方々には効果が及ばないということがないよう、幅広く「食べ物には困らない」状況をつくることは最優先だ。
軽減税率部分だけを時限的にゼロにし、経済が相当強くなってきた段階で標準税率分を10%から12%にしたとしても、国民の皆様に説明をすればご理解いただけるのではないか。例えば、消費税の標準税率は英国20%、フランス20%、イタリア22%となっている。現在の日本の状況は緊急事態だと捉え、過度な財源論に傾斜せず、多くの方々が食べ物には困らない対策を講じる必要がある。その上で、お金に余裕のある人は、その分を他の消費に回していただければ、別途の経済的効果が出てくると思う。
自民党の森山裕幹事長のご意見とは少し違う部分があるかもしれないが、署名活動をしてでも食料品が高いという国民の皆様の悩みに応えたいとする中堅若手の自民党国会議員たちがおり、頻繁に意見交換をしている。
旧氏の通称使用の環境を整備
― いわゆる選択的夫婦別姓問題では、旧姓の通称使用拡大を推進する立場を取っている。
(高市氏)私は、平成14年に旧氏の通称使用機会を拡大するための最初の法律案を書き、今年の1月には最新の内容に修正した。2019年の「改正住民基本台帳法施行令」の施行により不要になった部分を削除した。いずれも、国の機関、地方公共団体、公私の団体および事業者に対して旧氏を使用する機会を確保するための措置を講じていただく内容だ。
今では、住民票、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど、本人確認に必要なものへの旧氏併記が可能となり、すべての国家資格で旧氏が使えるようになった。国の機関の大方はクリアできていると思うが、一部の金融機関やクレジットカード事業者では旧氏使用にまだ対応できていないところが残っている。
― 法制審議会による要綱案など、いわゆる選択的夫婦別氏制度の問題点は。
(高市氏)あえて言えば、事業者を含む第三者の心理的・実務的な負担は相当大きなものになると思う。
夏の参院選で「1人でも多く当選を」と全国回る
― 石破政権をどのように評価するか。
(高市氏)昨年の衆院選で自民党は敗北し、衆院で自公は少数与党になった。予算委員会を拝見すると、石破総理は何としても予算案を通すために、野党がおっしゃることをすべて包み込む形で答弁されていた。予算案も野党の主張をかなり取り入れて修正して衆院を通過させ、その後に参院で再び修正となった。政権運営は相当苦労されていると思う。石破総理が本来、総理大臣になったらやりたいと思っておられたことはたくさんあるだろうが、それをまだ打ち出せる余裕がない状況なのかもしれない。つらいことだと思う。
― いずれ総裁選もあり、政治活動の状況や方針などは。
(高市氏)総裁選は2年半後だ。3年半前も、昨年も総裁選の公約も変わっておらず、同じことを言っている。よって、総理の職にあるならやりたいことも明確であり、特別に何かをしているわけではない。
今は党の治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会長としての職務に全力を尽くしている。闇バイト対策として昨年末に石破総理に提言した仮装身分捜査の導入や違法求人情報の削除は一気に進んだ。ロマンス詐欺や特殊詐欺でだまし取られたお金を取り返すための金融機関間の情報共有やログの保存についても、政府は調査会の案を丸のみしてくれる内容で4月に決定してくれた。
現在はオンラインカジノ対策に取り組んでいる。日本国内からオンラインカジノに賭金することは明確に違法だが、オンラインカジノに誘導するような広告を含むSNSなどでの発信行為、オンラインカジノウェブサイトやアプリも違法とし、削除要求できるようにすることなどが柱だ。「ギャンブル等依存症対策基本法」の改正を議員立法で委員長提案の形で実現するために、与野党各党に自民党案を示しているところだ。一部を修正の上、おおむねまとめることができそうだと考えており、ぜひ今国会で成立させたい。
今夏は参院選がある。参院でも与党過半数を失うと、法案は何も通らなくなる。1人でも多く当選してもらえるよう、週末や平日の夜は全国遊説に力を尽くしている。
※聞き手:政策ニュース.jp編集部
インタビューは2025年4月21日に実施しました
関連リンク
・高市早苗 – 公式サイト。プロフィール、基本理念、政治姿勢、実績など
・衆議院議員 高市 早苗(たかいち さなえ) – 経歴、関連ニュースなど。自民党
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