インタビュー

政策インタビュー:藤田文武・日本維新の会前幹事長に聞く「人口減少と外国人労働者」

推計超す速度で急増する在日外国人
「総量抑制」による計画的受け入れ不可欠
日本文化・価値観への適合重視し包摂
「人口庁」つくり人口増に頼らぬ経済モデル必要

藤田文武衆院議員(日本維新の会前幹事長)の在日外国人政策に通底するのは、歴史が培った日本社会の共同体や保守的価値観を積極的に評価し、それらに包摂する形での共生を重視していることだ。個人の権利や多様性の強調を起点とするリベラル的アプローチとは一線を画する。

せっかく日本に来てくれたのだから、うまく適合して技能を高めて活躍し、いい人生を送ってほしいー。このメッセージは、国籍は違っても同じ土地で同時代を生き、自己実現を図る者同士として認め合おうとする人生への肯定感に満ちる。

体育教師から企業経営、政治家へと歩んだ。地域でも国政の場でも、地に足を着けて精いっぱい取り組み、周囲の人と一緒に幸せになろうとする生活者の息づかいが伝わってくる。新時代の保守政治家である。

藤田文武衆院議員

藤田文武氏の発言のポイント

・政府は人口政策や外国人労働者受け入れなどを統合した戦略的方針をつくるべきだ
・国と地方レベルで横断的に人口、外国人問題をマネジメントする仕組みが必要だ
・政府は戦略的方針を実行する「人口庁」など一元的な司令塔機能を設置すべきだ
・在日外国人は公的試算の倍の速度で増えており、15~20年後に現在の3倍になりそうだ
・日本の全人口の割合に占める外国人数のボリュームに着目した議論が重要だ
・現状では在日外国人の増加スピードを遅くして「総量」を抑制することが必要だ
・日本の文化や保守的価値観のコミュニティーに適合する形で外国人を包摂すべきだ
・ビザや生活保護の悪用などの個別事案は制度を整えて絶対に防がねばならない
・人口が増えなくても経済成長できるモデルを構築する必要がある

※聞き手:政策ニュース.jp編集部
インタビューは2025年5月13日に実施しました

人口問題はあらゆる分野に波及

― 国会質疑で人口減少と外国人労働者の問題を取り上げている。

(藤田文武氏)これまで十数年間、企業を経営してきた。例えば介護、障害福祉、医療など労働集約型の分野に関わってきた。人口減少社会に突入し、少子高齢化が加速している。深刻な人手不足や民間経済への影響を実体験しており、人口問題はあらゆる分野の課題に波及するという課題意識が大きくなっていた。

2024年に入管難民法が改正され、従来の技能実習制度に代わって、労働力確保だけでなく高度な在留資格に移行する道筋をつくる、新たな「育成就労制度」が27年度から適用となる。この方向性自体は正しいと思っている。多くの企業が外国人労働者を欲しており、活用に成功している。しかし、根幹の方針として、日本の全人口に占める外国人の割合がどのくらいになるかというボリュームに着目した議論や政策が不可欠だと考えるに至った。

「増えすぎたから出て行って」とは言えない

― 日本政府が取るべき対策について、まずはどう考えるか。

(藤田氏)2点ある。一つは、日本には人口問題そのものや、その中で外国人をどう受け入れるかという全体的に整合性の取れた方針がないことだ。これまで各産業界や、地域から「緩和してほしい」という要望を受け、なし崩し的に広げてきたのが実情。何年後に人口のどのくらいの割合を外国人が占め、その時にどのような問題が起こり得るかという、統合された戦略的方針が必要だ。外国人問題はイコール人口政策であり、人口戦略。在日外国人が増えすぎた後で「やっぱり日本から出て行ってくれ」とは絶対に言えないことを忘れてはならない。

もう一つは、国、地方の両レベルで部門横断的、包括的にマネジメントできる仕組みをつくることだ。国レベルでは各府省庁、地方では都道府県と市区町村における連携が非常に重要だが、外国人問題においては、ほとんどなされていない。これは大問題。例を挙げると、入管行政は国の仕事だが、実際に外国人の住民サービスを担うのは市区町村。市区町村でいきなり外国人関連の問題が起きて、非常に苦しむケースが多発している。

在日外国人の増加速度は政府試算の倍

― 端的に言うと、どう政策を進めれば良いか。

(藤田氏)体系的に整合性の取れた大方針を決めたとするなら、やはり必要なのは司令塔機能だ。国会でこの問題を取り上げた時、石破茂首相も答弁で必要性に言及したのが、政府に置く「人口庁」といった組織だ。海外では移民省に相当する。現在の出入国在留管理庁のような単に出入りや在留の事務的管理ではなく、統合政策として在日外国人に社会に溶け込んでもらい、日本に貢献してもらう役割を担う。子どもがいたら教育、病気になったら福祉、もちろん雇用も関係する。これらが一元的、有機的に動く司令塔機能は不可欠。首相官邸や内閣官房に置くほどの重要性がある。

― 詳しく聞きたい。

(藤田氏)冒頭に述べた通り、受け入れる在日外国人のボリュームに強い問題意識がある。国立社会保障人口問題研究所は、2070年に在日外国人が総人口の10%を超すという試算を、公的年金の財政検証の中位推計として出した。ただ、その中位推計は既に現実と乖離し、少子化はより加速している。外国人の増加ペースは、過去3年は試算の倍ぐらいのスピードで増大している。この「現実」の速度で試算すると、何と2040年代後半に10%を超す。 今は3%だから、15~20年後に3倍になる計算だ。

政治、社会の分断は悲劇

― だとすれば、想定よりかなり速い。

(藤田氏)おそらく、この増加スピードに国民的コンセンサスはない。当然、どんな問題が起きるかを整理することが不可欠。それに伴い、まず増加スピードを遅くする、あるいは在日外国人の総量を抑制することを検討する必要がある。ひとりひとりの外国人が良いとか悪いとかいう観点ではなく、外国人が社会集団の中で一定規模を占めると、それに伴い当然に権利の主張も行われる。 そうなると、日本の制度と国民心理の両面で、摩擦なく受け入れることができなくなることを危ぶむ。

― 外国人の流入が進みすぎると、例えばどうなるのか。

(藤田氏)ヨーロッパの例で言うと、外国人の比率が10%を超えた国は、ひずみが顕在化している。例えば、社会保障の受給者が多いステージに達した国は、財政的コストが急増している。治安悪化や政治的分断に至った国もある。英国は先の地方選挙で移民排斥を訴える党が伸長した。ドイツでも移民を嫌う極右勢力が、人気を博して躍進した。

政治や社会の分断は悲劇であり、回避すべきだ。一方で、日本では非常に速い速度で外国人が増えていることを直視する必要がある。だからこそ政府が明確な方針を掲げ、堂々と議論し、国民的コンセンサスを形成すべきだ。その選択肢として、外国人の総量抑制を議論するわけだ。「人が足りないから外国人を入れればいい」と、なし崩し的に受け入れ、気づいた時には問題が噴出していてはならない。

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